空は清々しく、風は冷たく

やがて、ふたたび目を覚ますわたくし。
自分で起きたのか、起こされたのかは判然としないけれども、どうやら一晩が過ぎていたようで、ぼんやりと視界はいくらかまばゆく、これは陽の光か照明なのか、と思いながら、ぼーっとしている、人の気配、のどの渇き、すみません、あのぅ、スミマセン……

なにも心細いことはなく、声をかければ答えてくれる人の存在は、実にありがたいものでした、ということを、改めて思い出しております。

吸い飲みを何度か差し出され、くびり、ぐびり、くぴり、ごくりとした水は、特段に旨いとかありがたいとかそういうことはなかったけれども、あんだけ存在感のある水を飲んだのは初めてだ。
ほほぅ、これが水というものですか! とかそんくらいすごいかった。

んで、それからしばらく経つと、先ほどの看護士さん(……だと思う、声でしか判断できない、顔は見えていない)が「じゃあフセさん、歯磨きしてください」とか言って、右手に何かを握らせる。いや、何かってそりゃ、歯磨きって言っているのだから、歯ブラシです。



でも意味がわかんない。え、なんで歯磨き。
上手く理解できなくてしばらくぼんやり見てたけど、間違いなく歯ブラシだし(オレンジ色)、歯磨きペーストだってちゃあんと付いてある。

んー

すごい不思議! 脳腫瘍の手術が終わって、ICUでぼんやりしてる間に朝(?)が来て、目が覚めて水を飲ませてもらって、でもまだ目もはっきり見えないけど、最初にしたことが歯磨き。
なんかほかにやることはないのか。

とはいえそれで歯ブラシを投げ捨てるようなパンクな精神は持ち合わせていないので(当たり前だ)、しゃこ、しゃこ、と磨き始める。

が、途中で意識が薄れて、眠りそうになる。しゃこ、しゃ……こ

ごはん食べながら眠っちゃった子どもみたいな体で(まあ35歳ですけどね)、歯ブラシをくわえたままぼけーっとしていると「はい、じゃあうがいして。終わったら身体を拭きますからね」って、ぬるま湯に浸したタオルでじゃばーじゃばーと洗われる。けっこうびしょびしょになんのねあれ。

しかるのち、寝巻き(ゆかたみたいなやつ)に着替えさせてもらい(正確には、気づいたら着させられてるわけだけど)、ストレッチャーに乗せられてICUを出る。
隣の建物まで移動してCTを撮った後、一般病棟に戻る。その途中に、渡り廊下から見上げた空が、とても澄んで晴れ、風がきゅっと冷たくて、何やらの感動を覚えました。

ここから数日、自分でメモは出来なかったので、家族による。

20110126

1045
病室に戻る。水は飲んでも良い。痛み止めは2時ころ

昼食にはナポリタン的なスパゲティとか。全く食べられず。

1400
半身を起こす。鼻をかむ。
頭痛は一週間くらいかかってとれる、次の痛み止めは夜に
3時くらいにお小水くだぬく話あり
舌に口内炎のような痕。手術中に噛んでいたのかも
少しめまい

点滴:ヴィーンF、セファゾリンNa

1520
おしっこ管を抜くのは明朝に変更。管が動くと痛いらしいので、テープで固定してもらう。
もしかしたら夜に向けて熱が上がるかも。現在は37度

1600
車いすに移動して、廊下に出る。「車いすに酔った……」
目を開けるとふらふらするらしく、目をつぶって歩こうとする。ゆっくりだけど、部屋の前の廊下を往復。ベッドまで歩いて戻った。

1830
夕食。さんまの塩焼きを少しだけ食べる(尾頭付き)。おかゆ、おひたし、なすとピーマンの炒めには手をつけず。すまし汁だけ飲む。しきりに「頭が痛い」という。薬を飲んで、少し眠る。

2000
母とツマさん帰る。
(あいさつに受け答えはしていたが、翌日聞いたら全く覚えていなかった)

手術の次の日に、もう歩く練習をするっていうのにも驚いた。
あと、さんまがまるっと一尾でてたのに食べられなかったのも悔やまれた。